海外駐在員・出張者安全対策

海外駐在員・出張者の安全対策──企業に求められる安全配慮義務と具体的対応

海外派遣企業の落とし穴と安全配慮義務

海外駐在員・出張者の安全対策|安全配慮義務と企業が講じるべき対応|GISI   

このような状況に心当たりはありませんか

海外に社員を派遣している企業の多くが、以下のような状況に置かれています。

「海外出張者の安全対策は、外務省の海外安全ホームページを出発前に確認する程度で済ませている。」

外務省の海外安全ホームページは非常に有益な情報源ですが、そこに掲載されているのは国・地域単位の一般的な治安情報です。個々の企業の事業内容や活動拠点に即した具体的な安全対策は、企業自身が別途構築する必要があります。

「海外旅行保険に加入しているから大丈夫だと考えている。」

海外旅行保険は、事件・事故が「発生した後」の金銭的補償を行う仕組みです。保険に加入していても、事件そのものを防ぐことはできません。安全配慮義務が企業に求めているのは、事件・事故を「未然に防ぐ」ための体制を構築することであり、保険加入だけでは義務を果たしたことにはなりません。

「現地の安全管理は駐在員に任せきりで、本社に安全管理の専門部署がない。」

海外拠点の安全管理を現地の駐在員個人に委ねている企業は少なくありません。しかし駐在員は通常、営業や管理の専門家であり、安全管理の専門家ではありません。治安情勢の分析、警備計画の策定、緊急時の退避計画の作成等は、安全管理の専門的知見を持つ者が行うべき業務です。

「海外駐在員から『こちらは問題ありません』と報告が上がっているから安心している。」

現地に長く滞在していると、治安リスクへの感度が低下する現象(リスク慣れ)が起こります。駐在員本人が「問題ない」と感じていても、客観的には深刻なリスクが存在しているケースは珍しくありません。定期的に外部の専門家が現地を訪問し、第三者の目でリスクを評価する仕組みが必要です。

これらの状況は、いずれも安全配慮義務の観点から重大なリスクを抱えています。海外で事件・事故が発生した場合、「知りませんでした」「対策していませんでした」という説明は法的にも社会的にも通用しません。

本ページでは、海外に人員を派遣する企業が認識すべきリスクと、企業として講じるべき安全対策の全体像を解説します。


安全配慮義務の法的根拠

海外駐在員・出張者にも安全配慮義務は及ぶ

企業は、従業員に対して安全配慮義務を負っています。この義務は労働契約法第5条に「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と規定されています。

重要なのは、この義務が海外で勤務する従業員にも及ぶという点です。雇用形態(正社員、契約社員、派遣社員等)を問わず、また勤務場所が国内か海外かを問わず、企業は従業員の安全に配慮する義務を負います。海外駐在員、海外出張者、さらには帯同家族の安全についても、企業に適切な対策が求められます。

安全配慮義務違反のリスク

安全配慮義務に違反した場合、企業は民法第415条(債務不履行)または民法第709条(不法行為)に基づく損害賠償責任を問われる可能性があります。実際に、海外での事件・事故に関連して、企業の安全配慮義務違反が争われた裁判例が存在します。

賠償金額の問題だけではありません。安全配慮義務違反が認定された場合、企業の社会的信用は大きく毀損されます。特に上場企業にとっては、株価への影響、取引先からの信頼低下、採用活動への悪影響等、事業全体に波及するリスクがあります。

企業に求められる具体的対応

安全配慮義務を果たすために、企業には以下のような対応が求められます。

第一に、渡航先の治安情報の収集と従業員への提供です。外務省の海外安全ホームページだけでなく、お客様の事業内容や活動地域に即した具体的な情報を収集・分析して提供する必要があります。

第二に、赴任前・出張前の安全研修の実施です。渡航先で想定される脅威と、具体的な回避・対処行動を、渡航者本人と帯同家族に対して事前に教育する必要があります。

第三に、緊急時の連絡体制・退避計画の策定です。テロ・暴動・政変等が発生した場合に、誰が何をするのか、どのルートで退避するのか、本社側の対策本部はどう運営するのかを事前に計画しておく必要があります。

第四に、現地の住居・オフィスの安全性評価です。建物の構造、周辺環境、警備体制等を専門家の目で確認し、必要な改善を行う必要があります。

第五に、定期的な安全点検と体制の見直しです。治安情勢は刻々と変化するため、一度策定した安全対策を放置することはできません。

これらの対応が不十分なまま海外で事件・事故が発生した場合、企業は安全配慮義務違反として損害賠償責任を問われる可能性があります。

海外で企業が直面するリスク類型

海外における企業活動には、日本国内では想定しにくいリスクが伴います。以下に主なリスク類型を整理します。

4-1. テロ・暴動・政変リスク

海外では、テロ攻撃、暴動、クーデター等が日常的に発生する地域があります。これらの事態は予告なく発生し、巻き込まれた場合の生命へのリスクは極めて高くなります。

特に認識すべき点は、テロの対象が軍事施設や政府機関だけではないということです。ホテル、レストラン、ショッピングモール、空港等、民間人が集まるソフトターゲットが狙われるケースが増加しています。日本人が多く集まる場所は、それ自体がテロの標的となるリスクを抱えています。

GISIは、治安情勢の劣悪なイラク、アフガニスタン等で活動する企業に対して、危機管理対策情報を提供すると共に、各種のセミナーを実施しています。在イラク日本国大使館に警備対策員4人を常駐派遣し、アフガニスタンJICA事務所に警備対策官7人を常駐派遣した実績は、世界有数の高リスク環境における安全確保の実績です。

また、2014年〜2015年のタイにおけるクーデター発生時には、現地の治安情勢調査と企業への安全対策助言を実施しました。2013年のアルジェリア人質事件への対応としては、コンゴ民主共和国への緊急派遣を行っています。

4-2. 一般犯罪(強盗・誘拐・詐欺)

海外における日本人の犯罪被害は、強盗、窃盗、詐欺が多数を占めます。特に新興国では、日本人が「裕福な外国人」として標的にされるケースがあります。

誘拐(身代金目的を含む)についても、中南米、アフリカ、東南アジアの一部地域では現実的なリスクです。「誘拐は自分には関係ない」と考えがちですが、海外での日本人誘拐事件は過去に複数発生しています。企業として、誘拐発生時の対応手順(本社対策本部の設置、交渉方針、外部専門家の起用等)を事前に準備しておく必要があります。

GISIのコンサルタントは、全員が警察官として犯罪捜査の実務に従事した経験を有しています。「犯罪者の心理」「犯罪の手口」を知る者の視点で、実効性ある防犯対策を策定できることがGISIの特長です。一般の研修会社が行う「気をつけましょう」レベルの注意喚起ではなく、犯罪の実態に基づいた具体的な回避行動を指導します。

4-3. 交通事故・自然災害

海外では交通事情が日本と大きく異なる地域が多く、交通事故は海外駐在員の負傷・死亡原因の上位を占めています。途上国では道路インフラの未整備、交通法規の未遵守、車両の整備不良等が重なり、事故リスクが非常に高くなります。

運転手付き車両の利用が一般的な地域では、運転手の選定・管理も安全対策の重要な要素です。GISIの警備計画では、車両の安全確保も対象としています。

自然災害についても、日本と異なる対応が求められます。例えば、東南アジアの洪水、中南米の地震等は、発生頻度も規模も日本とは異なります。現地の災害特性を踏まえた避難計画が必要です。

4-4. 感染症

渡航先によっては、マラリア、デング熱、黄熱病、コレラ等の感染症リスクがあります。予防接種のスケジュール管理、現地の医療機関情報の事前把握、緊急医療搬送(メディカルエバキュエーション)体制の構築が必要です。特に医療インフラが脆弱な地域に駐在員を派遣する場合、現地で適切な治療を受けられない可能性を想定し、近隣国への搬送計画を含めた健康管理体制を整備する必要があります。

4-5. 現地法制度・文化の違いに起因するトラブル

現地の法律や慣習を知らないことによるトラブルも頻発しています。宗教上の禁忌への無配慮、写真撮影の制限違反、持ち込み禁止品(一部の薬品等)の所持、飲酒に関する規制への違反等が実例として報告されています。これらは「知らなかった」では済まされず、現地法に基づいて処罰される可能性があります。

赴任前研修で渡航先の法制度・文化・禁忌事項を体系的に教育することが、このリスクへの基本的な対策です。

企業が講じるべき安全対策

5-1. 渡航前:赴任前研修・リスクアセスメント

海外に人員を派遣する前に実施すべき対策です。

まず、渡航先のリスクアセスメントを行います。その国・地域の治安情勢、犯罪発生状況、政治的安定性、感染症リスク、自然災害リスク等を多角的に評価し、講じるべき対策の優先順位を決定します。

次に、渡航先の治安情勢、犯罪の手口、緊急時の行動要領について、赴任者本人と帯同家族に対して研修を行います。GISIでは、「危険地域に赴任する駐在員向けセミナー」「家族対策セミナー」を実施しています。これらのセミナーは、一般の研修会社が提供する異文化理解研修とは異なり、テロ・誘拐・犯罪への具体的な対処行動を、実務経験に基づいて指導するものです。

帯同家族向けのセミナーは特に重要です。駐在員本人は勤務先で一定の安全管理を受けられますが、帯同家族は日中、住居周辺や商業施設等で独自に行動することが多く、犯罪被害のリスクが高くなります。家族が知っておくべき安全情報と緊急時の行動手順を事前に教育することが不可欠です。

5-2. 滞在中:警備計画・定期安全点検・情報収集

駐在中は、以下の対策を継続的に実施する必要があります。

第一に、事務所・住居・移動手段の安全性を評価し、必要に応じて警備計画を策定します。GISIでは、コンサルタントが現地に赴いて、街の治安状況、犯罪の手口、脱出ルート等を自らの目で確認した上で、現地の警察への協力要請、現地の警備会社との交渉・警備員の面接、各警備実施計画の策定、定期安全点検の実施まで一貫して支援します。

第二に、現地の治安情報を定期的に収集・分析し、駐在員に提供します。GISIでは、お客様のニーズに応じた国内外の危機管理対策情報を収集・分析して提供しています。報道情報の転載ではなく、実際にその国・地域に常駐した経験を持つコンサルタントの視点で分析した情報を、お客様の業務に即した形で提供します。

第三に、定期的な安全点検です。策定した警備計画が正しく運用されているか、新たなリスク要因が発生していないかを定期的に確認し、必要に応じて計画を修正します。

5-3. 緊急時:退避計画・本社対策本部運営

テロ・暴動・政変等が発生した場合に備えて、退避計画を事前に策定しておく必要があります。退避計画には以下の要素を含めます。

退避判断の基準(どの段階で退避を開始するか)、退避手段・ルート(陸路/空路、複数ルートの確保)、集合場所・中継地点の設定、本社との連絡体制(通信手段の冗長化)、帯同家族の退避手順(家族が先行退避する場合の手順)、重要書類・機密情報の取扱い、現地スタッフへの対応方針。

また、本社側にも緊急対策本部の運営マニュアルを準備し、定期的に机上訓練を実施することが重要です。GISIでは「緊急事態発生時の対策本部要員向けセミナー」を実施しており、有事の際に本社側が機能するための意思決定プロセスを指導しています。

5-4. 帰国後:振り返り・マニュアル改善

駐在期間終了後は、現地での安全管理の実態を振り返り、マニュアルや体制の改善に反映させます。駐在員が経験した「ヒヤリハット」事例は、次の赴任者への貴重な知見です。この改善サイクルを組織的に回し続けることが、企業としての安全管理能力の向上につながります。

GISIの対応実績

GISIは2005年のMCM株式会社設立(2008年にGISIへ社名変更)以来、海外における日本人・日本の利益の安全確保を事業の核として活動してきました。

政府機関への常駐派遣実績

在イラク日本国大使館に警備対策員4人を常駐派遣しました。イラクは世界有数の高リスク環境であり、テロ・武装勢力の攻撃が日常的に発生する地域です。このような環境下で日本人のコンサルタントを長期常駐させ、大使館の警備体制を支援した実績は、GISIの能力を最も端的に示すものです。

アフガニスタンJICA事務所に警備対策官7人を常駐派遣しました。アフガニスタンもまた、テロ・武装攻撃のリスクが極めて高い地域です。JICA(独立行政法人国際協力機構)の事業遂行を安全面から支えるため、GISIのコンサルタントが現地に常駐して警備対策にあたりました。

これらの政府機関への常駐派遣実績は、日本企業のコンサルティング会社としては極めて稀有なものであり、GISIの専門性と信頼性を裏付ける最も重要な実績です。

代表・村嶋秀次の経歴

代表の村嶋秀次は、1957年福岡県生まれ。警視庁公安部での国際テロ対策・公安捜査の経験を経て、カンボジアPKO(国連平和維持活動)に文民警察官として参加しました。その後、在タイ日本国大使館に2等書記官兼領事(警備・邦人保護担当)として赴任。タイ王国栄誉勲章4級を受章しています。

帰国後はJSS(日本総合サービス株式会社)の危機管理事業本部次長として、JICA事務所の安全対策業務に従事。その後、東ティモール、アフガニスタン(2回)、パキスタンに政府安全調査団の一員として渡航しています。

日本国内では、内閣総理大臣賞、警察功労賞、警察庁長官賞詞1級、警視総監賞詞1級、警視総監賞誉3級を受賞。語学は英語、タイ語、クメール語に通じています。

海外での主な活動実績

以下は活動報告ページおよびプロフィールに記載されている事実に基づく記述です。

2006年、インドネシア主要空港における非常時訓練プロジェクトにJICA委託で副団長として参画しました。空港という公共インフラのテロ対策訓練体制構築に携わった実績です。

2007年、ミャンマーにおける邦人ジャーナリスト殺害事件の調査に携わりました。海外で発生した邦人被害事件の原因・背景を調査する業務です。

2010年、パプアニューギニア・ブーゲンビル島およびコンゴ民主共和国・キンシャサにおいて、ODA実施に関わる日系企業の安全確保のための治安情勢調査を実施しました。

2011年以降、イラクにおける日系企業の危機管理コンサルティングを継続して実施しています。

2012年、中国・上海および蘇州において、日系企業の安全確保に関する業務を実施しました。

2013年、アルジェリア人質事件への対応として、コンゴ民主共和国への緊急派遣を行いました。

2014年〜2015年、タイにおけるクーデター発生に伴い、現地の治安情勢調査と企業への安全対策助言を実施しました。

コンサルタントの特徴

GISIのコンサルタントは全員が警察・自衛隊OBです。そして全員が在外公館勤務または国際テロ対策業務に従事した経験を有しています。既存サイトには「インドネシアでのテロ対策訓練会議に参加する当社コンサルタント」の写真が掲載されており、また「危機管理センターでテロ対策訓練を視察する日本国大使一行」の写真も掲載されています。日本国大使がGISIの訓練を視察したという事実は、GISIの訓練水準の高さを示す重要なエビデンスです。

「外務省の情報だけでは不十分な理由」

外務省は「海外安全ホームページ」「たびレジ(短期渡航者登録)」「在留届電子届出システム」「在外安全対策セミナー」等を通じて、海外の安全情報を日本国民に提供しています。これらは非常に有益な情報源であり、海外に人員を派遣する企業は必ず活用すべきです。

しかし、外務省の役割は「情報提供」と「邦人保護」です。個々の企業に対して以下のようなサービスを提供することは、外務省の業務範囲外です。

企業の事業内容に即した個別の警備計画を策定すること。現地の警備会社を選定し、個々の警備員の適性を確認すること。現地の警察や軍と連携して、企業固有の安全確保体制を構築すること。定期的に現地を訪問して安全点検を実施し、問題点の確認・是正を行うこと。赴任者・帯同家族に対して個社別にカスタマイズした安全研修を実施すること。

GISIの代表は、ごあいさつにおいて「現地の日本大使館、総領事館の対応では不十分なこともある」と記しています。これは、代表自身が在タイ日本国大使館に2等書記官として勤務した経験から、大使館の中で邦人保護業務に直接携わった者として、在外公館の機能と限界の両方を熟知した上での言葉です。

在外公館の機能を補完する形で、企業の海外安全確保を現場レベルで支援すること——これがGISIの役割です。外務省が提供する「一般的な安全情報」と、GISIが提供する「個社別の現場対応型コンサルティング」は、競合するものではなく、相互に補完する関係にあります。

よくあるご質問

Qどの国・地域に対応できますか?
A特定の国・地域に限定していません。代表およびコンサルタントは約30か国での渡航・常駐実績を有しており、中東(イラク等)、東南アジア(タイ、カンボジア、インドネシア等)、アフリカ(コンゴ、パプアニューギニア等)、南アジア(アフガニスタン、パキスタン等)の治安が厳しい地域を含め幅広く対応しています。具体的な渡航先をお聞かせいただければ、対応可否をお伝えします。
Q赴任前研修だけ依頼することは可能ですか?
Aはい。セミナー・研修は単独でもご依頼いただけます。「危険地域に赴任する駐在員向けセミナー」「家族対策セミナー」「現場における緊急事態発生時の具体的行動要領セミナー」「緊急事態発生時の対策本部要員向けセミナー」等、お客様のニーズに応じたプログラムを設計いたします。
Q少人数の海外出張にも対応してもらえますか?
A対応可能です。出張先の治安情報の提供、出張前ブリーフィング、緊急時連絡体制の構築等、出張の規模や目的に応じた支援を行います。短期出張であっても、渡航先の治安状況によっては、警備計画の策定や現地ガイドの手配が必要になるケースがあります。
Q費用の目安を教えてください。
A対応内容(情報提供のみ/セミナー実施/現地調査を含む警備計画策定等)、期間、渡航先の治安状況等によって大きく異なります。まずはご状況をお聞かせいただき、必要な対応範囲を確認した上でお見積りいたします。初回のヒアリングは無料です。

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