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村嶋秀次の雑記帳(所長ブログ)

  • ~バンコクの爆弾テロ事件の行方は~

    2015/9/23

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    小職がタイのバンコクに出張している最中の817日午後655分頃、バンコクのまさに中心地と言って良いエラワン廟の直近に置かれた爆弾が爆発し、20人が死亡、120人余が負傷するという爆弾テロ事件が発生した。

    小職は丁度夕食をとりながら現地テレビ(3チャンネル)を見ていた。職業柄当然、咄嗟に次のことを考えた。「爆弾テロだ」「爆発の威力はイラク、アフガンでのそれと比べるとはるかに小さい」「手製かも」「この場所だと死傷者は多い、何故この場所を狙ったのか」「動機は」「イスラム過激派の可能性は」等々である。

    何故なら、クライアントである日系企業から電話、メール等で「現地の安全は大丈夫か?」等々と問い合わせの可能性があるからだ。各国で発生するこの種事件には常に関心を持ち、分析して、頭を整理しておかなければならない。クライアント企業からの問い合わせはなかったが、日本のメディアから問い合わせが来た。長年付き合いのあるフジテレビジョンだったので、翌日午後の番組に、バンコクから声の生出演をした。

     

    19日早朝に帰国して、引き続き現地の情報を収集・分析しているが、今回は被疑者らの組織、犯行動機等が中々絞り込めない。小職の見方は次のとおり。

    ①クーデターによる現在の軍事政権(プラユット政権)の長期にわたる政権運営、政策等に反発する過激分子による犯行

    ②同国南部で長らく分離・独立を主張してテロ活動を続けているイスラム過激派による犯行

    ③アルカイダ、ISIL等をはじめとする海外のイスラム過激派による犯行

    ④タイ政府が入国した100人余のウイグル族を中国に退去強制した措置に対するウイグル族支持の過激派分子による犯行

    ⑤単なる愉快犯による犯行

     

    発生直後の小職の直感では、①の可能性がかなり高く(今回小職の分析はハズレのようだ)、②~⑤の可能性は低かった。他方、小職がそうあってほしくないと思ったのは③であった。何故、③の要因が嫌なのかというと、タイはGDP1割以上を観光に委ねる国であり、バンコクは24時間稼働する大型の国際空港を持つ国際観光都市だからである。小職が現役の頃は、バンコクを経由して各国で活動する日本赤軍をはじめとする国際テロリストの動向を追ったものだ(現在でも後輩たちが黙々と努力しているはずと勝手に思っているが)。そして、それらの足跡は見られたのである。現在までのところ、イスラム過激派の特徴である「犯行声明」は出されていない。

    本ブログを書いているさなかに、犯人と見られる被疑者らが逮捕された。まだまだ動機、背景等が判明したわけではないが、今後④の可能性が高くなり、それに③の過激派が宣伝のために呼応してくるようだと、タイの治安が「いやーな感じ」になるなと思っている。きれば、④が背景、動機の犯行であったとの結論であればと願っている。

    小職はこれまで一貫して、タクシン派と反タクシン派がバンコクで激しく対立し、一部で銃撃戦、爆弾事件等が発生している時でも、タイの治安情勢は安定して推移していると主張してきた。何故なら、一定の狭い、定められたエリアで行われていたし、日本人がターゲットになっていないからである。しかし、今後、仏教を中心としながら、キリスト教、イスラム教、ヒンズー教等々を寛容に受け入れている国際都市バンコクを今回の事件を契機に格好の異教徒攻撃、宣伝の場として③の勢力が着目してテロを敢行するということになると、何ともやっかいであり、無差別に繰り返される可能性が出てくるのである。今後の捜査とそうならないことを祈りたい。

    以上