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村嶋秀次の雑記帳(所長ブログ)

  • ~日本版NSC設立と運用の難しさ~

    2013/6/24

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    順調な滑り出しの現政権で、日本版NSC設立法案が提出される模様だ。大いに結構なことだが、果たして米英のように上手く機能するのかが問題である。前安倍政権当時に提唱された際から、小職はどのような形で設立され、どのような裏方を組織し、要員を養成していくのか注目していた。今回は、いよいよ実現化へ動き出しているようだから、是非とも成功してもらいたいのだが、色々な諸問題を急がずクリアする必要がある。
    一つ目は、誰が(どの省庁出身者が)NSCのトップ(司令塔)に就くのか。巷では、警察、外務、防衛の各省庁が、熾烈なそのポスト争いをしていると報じられているが、果たしてどうなのだろう。小職は、警察のOBなので、対外情報収集活動・分析、秘密の保持等の観点から、現在のところ警察出身者が最適であると思っている。しかし、NSCとは別に内閣危機管理監、内閣情報官の2つのポストを既に警察官僚OBと現職警察官僚が占めていることから、特に外務省は何としてもNSCのトップのポストを手にしたいと思っているのではないかと推測している。
    全員とまでは言わないが、外務官僚の方々のこれまでの言動を見ていると、情報に対する様々なセンスが低いと言わざるを得ない。これは、ひとえに対外情報活動全般についての徹底した訓練をしていないからだと思っている。警察庁、防衛省は、外交の一本化を金科玉条のように唱え続けてきた外務省管轄下の各国大使館、領事館に出向して、その活動実態をつぶさに見てきている。少なくとも、テロ関連情報、軍事情報といった機微な情報を収集するのは、警察、防衛の専門分野の者でも容易ではないのである。
    アルジェリアのテロ事件を受けて、各国の大使館に防衛駐在官を増員配置しようなどといった内容が報じられたが、全く的外れの対策である。もし、それを本当に効果的に行いたいのであれば、対外情報活動に精通した警察の精鋭たちを警備対策官或いは領事として長期間(最低5年~10年)派遣すべきである。だが、警察当局は、それでなくとも数少ない精鋭たちをそうやすやすと他省庁へ出すわけはない。
    二つ目は、NSCと表裏一体となる実働部隊をどうするのかということである。
    警察、防衛、外務、一般等から人選して組織するだろうが、米英のCIA、MI6のようにするには、大変な時間と金がかかり、場合によっては「死して屍拾う者なし」という影の職に就く覚悟が各要員に備わる必要がある。言うは易し、行うは難しである。飛行機は比較的早く生産できても、搭乗員(パイロット)の養成は、今も昔も同様、かなりの時間を要するということである。
    そうは言っても、これまでのように今後も何も無いよりは、まずは形だけでも作っておいた方が良いだろう。NSC事務局と裏方が組織され、世界のあちこちに要員が散らばって、日本の国益に叶う機微な各種情報を収集できる日が来ることを楽しみにしている。そうなると、小職は職を失うことになりそうだが、それはそれで結構なことであると思っている。